[市民会議] 市民会議概要
市民会議の活動 / Citizens conference市民会議概要
烏川渓谷緑地市民会議(以下「市民会議」)は、烏川渓谷緑地の「良好な整備」、「適切な維持管理」、「効果的な利活用」などの観点から、烏川渓谷緑地の現在・今後のあり方に関する諸課題について、市民及び関係者と長野県が「共に考え、共に創る」ことを念頭に、検討・実行していくことを目的として、平成16年2月に発足しました。
現在は、安曇野市在住の方を中心とした市民会員(令和4年4月現在の会員数11名)を中心に、会議での議論・検討、検討結果を踏まえた公園内でのフィールドワークなど、烏川渓谷緑地に関する様々な活動に取り組んでいます。
1.市民会議の構成
市民会議は「構成員」と「関係者・関係機関」から組織されています(下図参照)。また、同会議には会員の中から互選により選出した座長・座長代理を置いています。
2.市民会議の活動
【概要】
活動項目 | 実施内容 |
---|---|
会議 | 烏川渓谷緑地に関する諸課題(以下)の検討、及び活動等報告 ・基本方針及び基本計画、事業計画、事業実施後の評価、維持管理、 利活用等の活動計画、活動に関する予算など |
維持管理等 | 森林(整備)作業:間伐、枝打ち、ササ刈り 植物調査:開花調査、樹木調査など 施設整備:ベンチ、標柱製作・設置など |
利活用 | 観察会の開催:カタクリ観察会など 学習会の開催:安全講習会、クマ学習会など |
事務局 | 上記各内容について、会場・道具・資材等の準備、片付け、講師等の依頼、活動に関する諸業務の実施 |
【維持管理、利活用等に関するグループ活動】
会員が行う活動には、グループによる活動もあります。現在、以下のグループが活動していますが、会員以外の方の参加も認めています。
グループ名 | 活動内容 | 人 数 |
---|---|---|
森林 保全チーム |
森林作業(間伐、枝打ち、ササ刈りなど) 催事実施(間伐体験学習会など) |
20名 (令和4年5月現在) |
植物班 | 植物調査(開花調査、樹木調査など) 催事実施(カタクリ観察会など) |
9名 (同上) |
会議
グループ活動
森林保全チーム
烏川渓谷緑地市民会議では園内の整備事業を会員と一般市民の手ですすめるよう「森林保全チーム」を作り活動しています。
森林保全チームは、2つの目的を持って活動しています。
1つめはこの緑地の安全で良好な森林の環境、そして機能の維持に役立てるために、森林を育てること。
2つめは、この緑地を、森林のメカニズムや生態系等についての知識と理解を深める学習の場・体験の場ととらえ、作業や講習等の活動を通して人を育てることです。
特に、森林エリアでは、行政と市民とが協働し緩やかに整備していくという方針が決められていて、エリア内を森林の特性や育成の方法などから8区域に区分しています。市民会議では放置された里山の多種多様な目的を持った森づくりを議論しながら、日々の活動に取り組んでいます。
具体的には、選木、伐木造材、搬出、枝打ちの他、支障木伐採や園路整備、ベンチ作り等々をしながら、森林整備のやり方を勉強しています。
3.活動概要
間伐作業(選木から集材作業まで)
森林整備の一連の作業を区域毎の整備方針に基づいて行っています。間伐後の環境を考慮しながら選木作業を行い、伐木造材、そして集材作業まで、すべて市民の手で行っています。
選木後、樹高や胸高直径を計測し、伐倒、枝払い、玉切りと作業は続きます。そして集材作業では、玉切りにした材を、時には集材機を使いながら行っています。
ここ森林エリアでは一律の整備をしていくのではなく、色々な環境が残っていくことが大切と考えています。県と市民とがみんなで話し合って作業を進めています。
枝打ち作業
枝打ちは、主にヒノキ等の針葉樹を対象に行うもので、樹木の健全な生長に必要な作業であるとともに、林内照度を上げ下層植生の発育を促すための重要な作業です。
作業は、はしごを掛けて木に登り、枝の付け根付近から手のこで切り落としていきます。また、高枝切りはさみを使って地上から作業することもあります。
とっくり広場では、枝打ちを集中的に実施した結果、林内が明るくなるとともに、風通しのよい快適な空間となりました。今後もやましごとの森を中心に、県と市民とが協働し、継続的な作業に取り組んでいきます。
木材市場見学会・松枯れ病学習会
一般的に木材がどのように流通していくのか、その仕組み等について理解を深めるため、木材が売買・取引される市場(木材センター)を見学する機会を設けています。
また、近年、公園周辺で松枯れの発生が確認されていることから、各地で猛威をふるう松枯れ病の原因や発生のメカニズムについて学ぶ機会を設けることで、園内のアカマツ間伐の際の枝処理方法に留意するなど、実際の作業にフィードバックしています。
安全講習会
林内作業等での事故事例を紹介しながら、事故を防止し、安全な作業を行うための留意点等について林業士であるチームリーダーを講師に、勉強をしています。
また、チェンソーの構造、手入れの方法等について実際に作業しながら学んでいます。ここで学んだことを実際の作業に活かしています。
植物班
烏川渓谷緑地市民会議「植物班」では、森林エリア内の樹木や草花などの植物全般の調査、特に園路沿いの春秋の林床植物の調査や、カタクリ・アマナのプロット調査等を実施しており、植生の広がりと生態の変化の把握に努めています。
また、森林保全チームとの連携で間伐した樹木の樹高や樹齢を計測して記録したり、外からの侵入植物(オオバコ・クローバーなど)の駆除作業を行うなど、植生の変異にも注意を払っています。
森林エリアをこれからどのように育てていくのかという目安となる基礎調査を積み重ねているところです。植物班には市民会議会員と会員以外の一般参加の方が所属しています。林床調査では松本自然観察会会員の応援参加や、カタクリ・アマナ調査では県環境保全研究所の指導を受けるなど外部からの支援、指導、助言等の協力をいただきながら活動しています。
4.活動概要
カタクリ観察会
斧研(ユキトギ)沢の森では、平成19年から毎年4月中旬の開花にあわせ講師を招き公開学習会を開催しています。開花するまで約8年を要し、芽だしから結実まで約1ヶ月しか地上に姿を見せない「春の妖精」カタクリのファンも少なくありません。
カタクリ・アマナのプロット調査
カタクリの生態を観察・調査するために、日照環境の異なる地点を選んで試験区(2m×2m)を6箇所設置しています。試験区では、出現するカタクリすべてに番号をつけ、株の位置と葉形を図化し、葉の形や大きさを計測する個体調査をしています。芽だし・開葉・開花・結実・消滅日の記録をとり続け、各個体の葉の形状からカタクリの個体年代を推定し、地域の年齢別個体数を推計しながら、カタクリの繁殖管理に結びつけたいと考えています。 アマナ(長野県絶滅危惧種IB類)も同様に試験地(調査プロット)を設置し、開花・結実の継続調査を行っています。調査は開園した平成17年から継続しています。
林床植物調査
平成19年から毎年、春と秋の2回、森林エリアの園路沿いを100m毎の区間に区分して、出現する林床植物の調査を実施しています。毎年同時季の継続調査で、林内環境の変化に伴い年々新しく出現する植物が増え、平成22年の調査では植物専門の講師の指導を受けながら植物名の同定を行い、林床植物調査リストの完成に努めました。今後も定期的に調査を実施し、森林エリアの植生の年度別変化がわかる貴重な基礎データとして、森づくりに役立てたいと考えています。
過去に実施したイベントの紹介
ツキノワグマ講習会
園内でたびたびツキノワグマが目撃されるようになったため、専門家を招き、ツキノワグマについて考える集いを開催しています。現地視察と座学を通じて、クマと人間の共存のあり方を学んでいます。専門家からは、森林エリアはクマの生息地であるため、人間の側が鈴やラジオを携帯すること、クマとの鉢合わせしないために見通しを良くすること、看板などクマへの注意喚起を利用者に示していくことなどを学んできました。また、平成21年度に専門家との現地調査を重ね、平成22年度に事故防止を目的にした「クマ対策マニュアル」を県が市民と協力しながら作成しました。
昆虫の目から見た棲みよい森づくり
昆虫を題材に毎年フィールドを観察いただいている講師から、昆虫の生態や生息環境について学んでいます。
昆虫が棲む森とは、食草(食樹)や活動できる広さ(空間)などが必要です。
講習会で学んだことは「多くの昆虫が棲める森づくり」を目指した園内管理にも活かされています。
森の中のバードウォッチング
烏川渓谷緑地やその周辺では、数多くの野鳥が確認されています。一回の観察会で30種余りの野鳥が観察できることもあります。その鳥類の種類と個々の生態等について学習し、実際の鳥の姿や鳴き声についての観察を実施しました。
バードウォッチングを通じて学習した営巣中の野鳥への配慮など、多くの野鳥が棲み、観察が出来る森づくりに反映されています。
会員の声
烏川渓谷緑地の今、そして目指すもの
私達市民会議は、森林と渓谷とで構成された里山としての自然をできるだけ残しつつ、来園者に親しまれる森林公園を目指しています。
市民会議は主に森林エリアを中心に活動していますが、単に林業的見地に立って手を入れるのではなく、様々な角度からの視点で森づくりを考え、整備を実践して行かなくてはなりません。植物班によるカタクリ・アマナ調査、樹木調査は開園当初からスタートしており、平成19年からは林床植物調査も始まっています。平成21年からは探鳥会、昆虫の観察会をスタートさせました。また、野鳥や昆虫が棲みやすい森、貴重な樹木植物が守られ増えるような環境、そしてクマやサルや他の野生動物と人とが共生する森、そんな森をどうつくっていくのか、それが私達市民会議にとっての大命題です。
森に親しみ、森に学ぶ楽しみ
私達は、まず一番に「森林エリアにはどんな樹が生え、どんな森があるのか」の調査から始めました。来園者が森を肌で感じ、樹と知り合い、友達となり、親しんでもらうためには、樹の名前を知って、樹と対話できることが大切と考え、樹名札をつけることとしました。ここでは、カエデの仲間が多く、カエルの手の形のものから、切れ込みのない丸いものまで、色々な葉の形に驚かされます。また、同じ仲間のシラカンバ、ウダイカンバ、ダケカンバや、人の生活と関係の深い、スギ・ヒノキ、クリ・コナラ・ミズナラなどもこの里山に生育しています。お好みの樹を探し、よく観て、幹に触れて、樹と対話を楽しんでみて下さい。
斧研沢の森のカタクリ
斧研沢の沢筋の平坦地にはカタクリが自生しています。私達は開園来継続してカタクリの観察会を開催しています。
平成26年4月に調査区の開花株をカウントしたところ開花数は11,097株で、毎年増加を確認しています。カタクリは開花するまで約8年はかかりますがその総数は推定で3万株を越すと思われます。
カタクリは春植物の代表種でスプリング・エフェメラル(春の短い命)と呼ばれ、雪が消え天空を覆う広葉樹の梢の葉が開く前、太陽の光が地上に届いている約1ヶ月の短い時間に、『芽を出し、花を咲かせ、結実する』地上の生活を終えて地上から姿を消して(夏眠)しまうのです。
カタクリの実生は、数センチメートルの細長い緑色の糸状の植物体で、わずか1ヶ月に満たない期間しか地上に姿をとどめません。この間地下では小さな鱗茎(りんけい)をつくり、貯蔵物質(澱粉)を蓄え、翌年4月頃に再び地上に芽を出します。2年目には人の小指の爪ぐらいの小さな卵状楕円形の葉を1枚、地上に出します。このような1枚葉の無性段階の栄養成長期を何年にもわたって繰り返し大きく生長していきます。この間、年毎に葉の形状を変え、その形が卵形、広卵形、長卵形へと変化します。種子が発芽してから7~8年後に、はじめて一部の有性の開花個体が必ず大小2枚の大きさの違う葉を展開して開花するのです。
野生鳥獣との共存
この森は、クマ、カモシカ、サル、ウサギ、ムササビ、リス、野鳥も春にはオオルリにはじまりコゲラ、アオバト、ノスリなど多くの生きものたちの棲み家です。クマやカモシカに遭遇したことは何度もあります。元々彼らの住んでいるところに公園をつくったのですから、彼らと仲良くしていかざるを得ませんよね。クマとも共存ということで、人間が森に入るときは、鐘を鳴らし、また鈴の付いた杖を突いて、先住者に挨拶をして入園することにしています。